スポーツ整形外科
スポーツ整形外科について
当院の整形外科では、スポーツ整形外科にも注力し、スポーツ選手をはじめ、スポーツ愛好家や学生などスポーツを始めようとする方々も対象としています。
スポーツ障害予防に向けた取り組み
野球肘検診
当院スポーツ整形外科としては、医師の松村が2018年にオリックスバファローズチームドクターに就任しました。 また病院全体も契約し、選手をはじめ、球団関係者のケア・治療にあたっていす。 また、もちろんプロ団体のみならず、競技レベルのスポーツ選手、スポーツ愛好家や小児スポーツなどさまざまな年代や、レベルの方々にも精一杯対応させていただいています。 スポーツ選手を診させて頂きながら、病院での対応(診療や治療)も重要ですが、予防こそが重要であると我々は考えています。 その一貫として、スポーツ選手のリハビリテーションを担当いただいている当院の登録医である本城整形外科にて当院の松村より本年度より大阪市内の野球チームに向けた野球肘障害の検診活動を行いました。
ある調査では、野球をしているお子さんの約半数に肘の内側に骨の変形があり、野球を始めてから現在に至るまでに肘痛の経験は6割にのぼるとのことです。 肘の外側で上腕骨小頭離断性骨軟骨炎といった診断に至ると、他の疾患と比べると手術になる確率が高くなります。 実際の検診ではこのような知識の共有を、講義を通して行います。 お子さんの体の状態のチェックとして、体に負担のかからない超音波検査と体の硬さや関節の可動域の検査を行います。
全国的には盛んに行われてきている野球肘検診ですが、大阪での普及はいまだに不十分と思います。 この検診を行い、数名に肘の内側の障害を認め、痛みがあるお子さんにはリハビリを中心とした治療を行い、痛みなく復帰に至っています。 また、肘のみならず、膝や肩など不安を抱えている部位の相談も受けて対応しました。 受診された際には、自身の体のことで悩んでいた他チームの選手も一緒に連れてきてくれました。 今後のこの活動を当院スポーツ整形外科と本城整形外科とで協力し、まだまだ野球の障害で悩んでいる子供達に向けて進めていきたいと考えています。 スタッフの人数にも、現在対象とさせていただいているチーム数にも制限があり、直接チーム関係者と連絡を取り合って行っている現状です。 ご要望がありましたら、詳細も含めて当院整形外科医の松村までお問い合わせください。
スポーツ医学検定について
当院整形外科・スポーツ整形外科では日々の整形外科診療はもちろん、スポーツ選手の診療にも従事しています。 プロからレクリエーションレベルの選手、また少年少女など、スポーツに関わる全ての方の治療を行っています。 近年スポーツの普及に伴い、スポーツ整形外科のニーズも高まっており、病院を受診されるケースも増加しています。
その中で現在は野球肘健診をはじめとした全国規模での健診活動や各競技団体によるさまざまな傷害や外傷予防の活動などが盛んに行われるようになってきました。 しかし、不幸にも怪我によるスポーツの断念や変更など、また生死に関わる事案があることも事実です。
スポーツを行うにあたり、選手やその家族、監督、コーチ、主催者、学校、団体など周囲の関係者の方に共通した知識と意識があれば、そのような不幸な事案が減らせるのではないかと思います。
そこで2015年12月にスポーツ医学検定機構が設立され、第1回「スポーツ医学検定」が2017年5月に行われました。 スポーツに関わる全ての方が共通の知識と意識をもち、一緒に【スポーツでの怪我を減らし、笑顔を増やす】(スポーツ医学検定機構の理念)ことを目指していきましょう。
当院整形外科の松村医師と城内医師はスポーツ医各検定のMedical advisory boardのメンバーです。 共通理念のもと診療にあたり、また院外活動も盛んに行っています。 スポーツ傷害・外傷などのお困りごと、また検定についてもご相談ください。 病院内でも検定についての案内や資料などを配布しています。
2017年 第7回ハンドボール女子ユースアジア選手権日本代表帯同ドクター報告
2016年より日本ハンドボール協会に所属し、自身としては初めての代表帯同ドクターとして活動してきました。 大会は2017年8月20日~28日にインドネシアのジャカルタで開催されました。 2018年にポーランドで開催される世界選手権への出場権もかかる重要な大会です。
帯同ドクターの役割を中心に報告したいと思います。
チームは2017年8月14日より直前合宿を東京で行い、8月18日朝7時から開催地であるインドネシアのジャカルタへ向かいました。 フライトは約7時間でした。 滞在先まではジャカルタ名物の一つである道路渋滞のためにバス移動に3時間かかり、最終的に夜の9時頃の到着となりました。 ユース世代のため半数以上の選手が長期フライトや海外が初めてであり、出発前より移動時の注意点(マスク着用等)、機内での過ごし方などについて講義をして体調管理に務めます。
滞在先は大会組織委員会により提供されたホテルで、韓国、中国、カザフスタンのチームと同じホテルに滞在しました。 ある程度のサービスやアメニティは揃っており、普通に滞在する分には問題なかったのですが、やはり日本のサービスや食事に慣れていると物足りない部分がありました。 空調やシャワーの水圧(湯船なし)、部屋の臭い、ホテルスタッフの対応の遅れなど、随時現地ガイドを通じて対応しました。 基本的な語学力(主に英語)が求められ、通訳としても活動しました。 食事のバリエーションは少なく2~3日で1周し、バイキング形式でほぼ3食全てホテル内で済ませます。
揚げ物やスパイシーな味付けなどで十分栄養摂取できず、栄養管理状態にも関与するため、炊飯器をチームで持参しフリーズドライの製品を日本より持ち込みました。 ホテルシェフにも味付けやメニューなどできる限り交渉しました。 生野菜や水道水では食あたりを起こすと言われており、野菜ジュースやミネラルウォーターを飲用し、胃腸環境の調整のために乳製品を積極的にとりました。
また8月の乾季であり、非常に暑いため熱中症に注意し十分な水分摂取を促しました。 実際は最高気温も滞在期間中は32~33度程度で、日本の高温多湿の環境より過ごしやすい状態でした。 主に競技場で割り当てられた時間での練習となり、炎天下でのトレーニングは必要最小限としました。 また蚊による感染症の媒介も懸念されたため、忌避剤を十分量持参していきました。 乾季のためまだ蚊は少ないようでしたが、それでも大量にいる印象でした。
帯同ドクターの役割は、外傷・傷害発生時の対応以外にも多岐にわたります。 上述した衣食住環境の調整と同様に、選手のコンディション調整も重要です。 毎日、体重・体温・脈拍・睡眠について選手自身で測定し、チェックシートに記入してもらいました。 また体の水分バランスもパフォーマンスに影響するため、脱水の評価を尿比重測定にて行いました。 自身で体の状態を把握できるようにし、問題のある選手には個別にアプローチしました。 気候や食事環境の違いなどもあり、滞在期間中、十分な水分摂取ができていたとは言えず、選手は脱水傾向にありました。 水分摂取の重要性をより強く説く必要があったと思っています。
大会を通して登録メンバーとして外れるような、大きな外傷や疾病はなく経過しました。 懸念された胃腸障害も、体調管理もあってか、選手では4名程度の腹痛と下痢がありましたが、練習やゲームは可能な状態でした。
帯同するにあたり、新たな試みとしては、日常診療で超音波検査機器を用いた診断や治療を行なっており、海外遠征には有用であろうと考え、関係各所にご協力いただき、検査機器1台をスーツケースに入れ持参しました。
実際に足関節の捻挫が2選手に起こりましたが、靭帯損傷や骨折などがないことを即時に診断できたため、安心してトレーナーによるケアをしていただき、翌日には練習や試合へも復帰できました。
監督・コーチ・トレーナーとドクターである私のスタッフ4人で日々コミュニケーションをはかり、情報を共有して選手の状態を把握することやさまざまな心情などにも配慮する日々でした。
監督にさまざまな配慮をいただいたため急造チームではありましたが、連携不足にならないように活動させてもらえたと思います。
大会は、7カ国で総当たり戦でした。最終日に宿敵である韓国戦を控えていましたが、初戦は近年力をつけてきていて、体格で勝る中国戦でした。 初戦と初めての国際大会という緊張などもあり、リードは保つものの油断を許さないゲーム運びでした。 最終的に組織力と走力で勝る日本が10点以上の差をつけ勝利しました。 以後連勝を重ね、最終日の韓国戦にお互い無敗でのぞみました。 大会6連覇中の韓国の壁は厚く、2位で大会を終えました。 しかし、世界選手権の出場権は獲得しました。 選手、スタッフ共々雪辱に燃える想いです。 大会期間中、他国と比べると小柄ながら、掛け声の大きさや礼儀正しさ、プレーへの熱心さ、スピードなど、まだ幼さの残る容姿から発せられる思いがけないプレーが開催国であるインドネシアの人々の目に止まり、日に日に日本を応援する人が増えてきていました。 ユース世代とはいえ日本を代表するチームであり、他国の人々の心も動かしていることをチームの一員として非常に誇らしく思いました。
医科学スタッフとして、より充実したサポートを今後も心がけるともに、帯同での活動のみならず、日頃からのサポート体制にも携わり研鑽していく所存です。最後になりますが、直前合宿も含め約2週間もの間病院を不在にして、ご迷惑をおかけしましたが、ご理解いただいた患者さん、皆さまに心より感謝を申し上げます。