消化器内科

逆流性食道炎に対する”内視鏡的逆流防止粘膜切除術(ARMS)”を導入しました

逆流性食道炎に対する”内視鏡的逆流防止粘膜切除術(ARMS)”を導入しました

多根総合病院では、患者様の健康と質の高い医療サービス提供に向けて常に最先端の治療法の導入に努めております。このたび、消化器内科は逆流性食道炎患者様に対する内視鏡的逆流防止粘膜切除術(ARMS: アームズ)を新たに導入いたしました(保険診療)。特に、ARMSの一種である内視鏡的逆流防止粘膜形成術(ARMP:アームピー)を取り入れることで、より迅速な効果と偶発症のリスク低減を目指しています。

ARMSは、難治性の胃食道逆流症(GERD, 逆流性食道炎を含む)に対する革新的な非手術的治療法です。この治療法は、PPI※1やPCAB※2などの胃酸の分泌を強力に抑えるによる治療でも症状の改善が見られない方、またはこれらの薬剤を長期にわたって服用し続けることによる副作用のリスクが懸念される方々に適しています。

※1 PPI・・・エソメプラゾール(ネキシウム)、ランソプラゾール(タケプロン)、ラベプラゾール(パリエット)など
※2 PCAB・・・ボノプラザン(タケキャブ)

内視鏡的逆流防止粘膜切除術(ARMS)とはどんな治療?

ARMSは、胃カメラを利用して、食道と胃の接合部(EGJ)にある粘膜の一部を取り除き、その後に粘膜を再形成することで、胃液の逆流の原因となっている食道胃接合部(EGJ)の緩さを改善し逆流を防ぐ手法です。この処置は内視鏡だけで完結するため、開腹手術や鏡視下手術と違い体表に傷を作りません。また鎮静剤投与下で行うため治療中は熟睡しており苦痛はありません。

手術との比較

従来のGERDに対する非薬物治療は、腹腔鏡下Nissen手術というものがあります。従来医学的には、逆流性食道炎の患者様はPPI/PCABでコントロール可能な方とNissen手術が必要な方に二分されていました。しかしARMSの登場によりNissen手術が必要な方々のうちの多くは、このARMSという低侵襲内視鏡治療で治療可能です。ARMSが良いと考えられる患者様を見極めて行うことで、ARMSは効果の面でNissen手術と同等であり短期的・長期的に逆流症状の改善・生活の質(QOL)向上に繋がります。さらに、内視鏡による低侵襲治療であるため、手術と比較し以下のようなメリットがあります。

  • 体表に傷を一切作ることなく治療が可能
  • 治療時間が短い
  • 入院期間が短い
  • 治療後の痛みがほとんどない
  • 日常生活や仕事への復帰が早い

参考文献:
Surg Endosc. 2021 Dec;35(12):7174-7182
Surg Endosc. 2023 May;37(5):3944-3951.

ARMS(ARMP)が適応となる患者様

この革新的な内視鏡治療は、特に以下のようなGERD(胃食道逆流症)/逆流性食道炎の患者様に推奨されます。

  • PPI※1やPCAB※2を服用しても、症状が改善しない難治性GERDの方
  • PPIやPCABを継続的に服用しなければ症状がコントロールできない方
  • PPIやPCABの長期使用に伴う副作用のリスクを懸念される方

日々の生活で症状や内服継続という苦痛を常に伴うGERDの患者様にとって、ARMPは新たな希望をもたらします。当院の専門医が一人ひとりの患者様の状態を丁寧に評価し、最適な治療法をご提案いたします。

多根総合病院では、患者様一人ひとりに合わせた治療を心がけ、より良い健康へのお手伝いをしてまいります。ARMS/ARMPについてのご相談や、その他の治療法に関するお問い合わせは、お気軽に当院までご連絡ください。


図ARMPの内視鏡画像