TANE-Pプロジェクトすい臓がんの早期発見・予後改善に向けた取り組み
すい臓がんの早期発見・予後改善に向けた取り組み”TANE-Pプロジェクト”
多根総合病院 消化器内科・消化器外科(肝胆膵外科)
PBEST (Pancreatobiliary Endoscopist and Surgeon Team)
ご存知の通り膵癌は最新2021年の統計でも相対5年生存率が9.8%と非常に予後の悪い悪性腫瘍です。一方で昨今は膵癌のハイリスクグループが明らかになってきており(表:膵癌のリスクファクター参照)、その方々を対象に専門病院でCT、MRI、超音波内視鏡(EUS)、ERCP等で精密検査をすれば、膵臓癌を手術ができるステージで発見し予後が改善できると考えられています。
近年、消化器領域ではこういった膵癌ハイリスクグループに対する精密検査とフォローアップを積極的に行うことで膵癌を早期に発見し治療し予後を改善すべく“膵癌早期発見プロジェクト”なる取り組みが多くの地域で行われるようになっております。
膵癌ハイリスク因子には、家族歴や新規糖尿病発症、膵嚢胞や膵管拡張に加え、近年は“限局性膵萎縮”も注目されています(図1参照)。
プロジェクトのスタートであるハイリスクグループの絞り込みは、消化器医はもちろん他の内科医、開業医や検診に関わる医療従事者による膵癌を意識した問診と腹部エコーやCTからスタートし専門病院へバトンが渡されます。(図2:膵癌早期発見のためのアルゴリズム参照)
実際に当院でもハイリスクグループの精査やフォローアップにより膵癌を早期に発見し手術できたケースを何例も経験しております(図3:症例参照)。また、最初にプロジェクトを提唱した地域からはステージ0,I膵癌の発見率増加、手術率増加、5年生存率が15-20%に改善したと報告されています。
大阪西部エリアにおいてはまだこのようなプロジェクトは旗揚げされていません。われわれは“TANE-Pプロジェクト” (= Treat operAble NEoplasm of Pancreas)と称し、膵がん早期発見・予後改善への取り組み(住民・医療機関への啓蒙、膵ドックの導入、膵がんに関する地域連携の強化)を進めております。
当院には消化器内科・肝胆膵外科、放射線治療科、腫瘍内科、緩和医療科など膵がんの診療体制が整っています。責任もって誠心誠意診療して参ります。膵がんが疑われる患者様はもちろんのこと、“膵癌ハイリスクチェックリスト”をご活用いただきハイリスクな方がおられましたら当院へご紹介いただければと存じます。
表:膵癌のリスクファクター(膵癌診療ガイドライン2022年版より)
図1:限局性膵萎縮
図2:膵癌早期発見のためのアルゴリズム
図3:症例