1分1秒を争う心臓や血管の病気に対応する循環器内科
1分1秒を争う心臓や血管の病気に対応 不整脈専門医着任で治療・救急体制を強化
心臓や血管に関係する病気は命にかかわるものがあり、専門医による素早い診断と治療が大切です。
多根総合病院の循環器内科では、狭心症や心筋梗塞、不整脈や心不全、心臓弁膜症などの病気に対応しています。
そして、今年4月に不整脈治療の専門医が着任したことで一般的な治療はもちろん、救急治療の幅が広がりました。
土井淳史循環器内科部長に専門とされる不整脈を中心にお話をうかがいました。
循環器内科とは
循環器内科は心臓や血管の病気を専門に診る診療科です。
当院では、胸痛を伴う狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患、下肢の疼痛や間欠性跛行の原因となる閉塞性動脈硬化症、息切れを感じる慢性心不全や心臓弁膜症、動悸・失神などの原因となる不整脈に特に力を入れて診療しています。
また、これらの病気は生活習慣病と関係していることが多いため、総合病院として他科との連携を密に、心臓の病気に影響を及ぼす生活習慣指導なども含めた総合的な診療を行っています。
不整脈
心臓は心筋という筋肉でできていて、1分間に50~100回、1日に平均10万回、全身に血液を送るポンプ機能の役割を担っています。
そのポンプ機能が何らかの原因で低下し、血液循環がうまくいかなくなる状態を「心不全」といいます。
そして心不全の原因の一つが脈の異常である「不整脈」です。
不整脈の症状
不整脈といっても自覚症状はさまざまです。
脈が正常よりも速くなる「頻脈(ひんみゃく)」では、心臓がドキドキするなどの強い動悸や動いたときに息切れを感じるようになります。
一方、脈が正常よりも極端に遅くなる「徐脈(じょみゃく)」では、目の前が暗くなるようなめまいや失神を起こすこともあります。
しかし、不整脈の症状がなくても、突然死など重篤な病気を引き起こしてしまうこともあり注意が必要です。
通常、安静時の脈拍が100回を超えると何らかの病気が隠れていることが推測されます。
そして120~140回を超える状態が持続すると心不全になりやすいと言われています。
診断・検査
不整脈の診断には一般的には心電図検査をします。
ただ、検診では5秒ほど、長くても3分くらいなので、そのときに異常がなければ見つかりません。
そのため、当院では異常が疑われる場合、24時間連続で心電図を記録する「ホルター心電図検査」や、「1週間ホルター心電図」を装着していただいています。
さらに動悸などの症状が出てより疑わしい場合は、「携帯型心電計」を利用する場合があります。
不整脈は疲れやストレス、お酒を飲みすぎた翌日などにも出やすい症状でもあり、放っておいても大丈夫なものもありますが、日常でも検脈し、少しでも気になる症状があれば検査を受けていただき原因を突き止めることが大切です。
治療について
脈が早い場合のカテーテルアブレーション治療
心拍数が増加する「頻脈」は、狭心症、心筋梗塞、心不全などの心疾患が原因となって生じることがあります。
また、高血圧や過度の緊張、身体的・精神的ストレス、タバコやお酒の飲み過ぎなどが誘因となることも考えられます。
頻脈の治療法はさまざまありますが、軽度の場合は日常の生活習慣を見直したり、薬を服用したりすることで軽減できる場合もあります。
しかし、それでも改善せず、日常生活に支障が出る場合には、カテーテルアブレーションによる治療を選択します。
カテーテルアブレーションとは、外径1.7㎜ほどの細長い管状の器具を頚部や足の付け根の血管から心臓に挿入し、カテーテルの先端についている電極から電気を流して不整脈の元凶となる心臓の筋肉の悪い部分に熱を加えて焼灼する治療です。
治療効果が高く、手術時間は全身麻酔で3時間程度、4日間ほどの入院で手術翌日には歩行できるほどの低侵襲な治療方法です。
そして、今年4月から不整脈専門医が常勤となったことで循環器内科の体制が強化され、カテーテルアブレーション治療を積極的に行うことができるようになりました。
脈が遅い場合のペースメーカ治療
心臓には右心房・左心房・右心室・左心室という4つの部屋があり、これらの部屋が順序良く収縮することで血液を全身へ送り出しています。
右心房にある「洞(どう)結節(けっせつ)」という場所が発電所のような働きをして電気信号を出し、「房室(ぼうしつ)結節(けっせつ)」という場所にたどりつくことで心室が収縮を行うのですが、心拍数が遅くなる「徐脈」はその「洞結節」と「房室結節」に異常が起こることが主な原因です。
1分間に脈拍が50回未満になると徐脈と診断されますが、血圧を下げる薬などの影響で徐脈の症状が出る場合もあります。
ただし、40回前後になると何らかの不整脈が起こっている可能性があるので要注意です。
もし、心臓の電気信号の障害によって脈が遅くなっているのであれば、内服薬では治療できないためペースメーカなどの使用を検討します。
不整脈治療に使用するペースメーカといっても適応疾患によっていろいろあります。
一般的な心拍数の低下にはペースメーカ、重篤な致死性不整脈には植込み型除細動器(ICD)、心不全に対しては両心室ペースメーカを使用します。
当院では、このたびの診療体制強化により救急体制も強化していますので、患者さんの症状により最適な治療をご提供しています。
冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)にも対応
心臓が絶えず動き続けるためには心臓に栄養や酸素が届かなくてはなりません。
心臓から出た大動脈は最初に心臓自身に血液を送るための血管の枝を出しており、この枝が冠動脈です。
狭心症
冠動脈が何らかの原因で細くなってしまう病気が「狭心症」です。
主な症状は胸の痛みや息苦しさ、吐き気、嘔吐などがあります。
まずは心電図、心臓超音波検査を行い、狭心症が疑われるのであれば造影剤を投与して冠動脈CT撮影で病変がないかを調べます。
当院では2019年度から256列のマルチスライスCTが稼働しており、簡便なCT撮影でかなり精密な冠動脈の情報を得ることが可能です。
造影剤にアレルギーのある方や腎臓の機能が悪い方は、薬を注射して心臓の筋肉の血流を見る心筋シンチグラムという検査で冠動脈の病変を確認し、心臓カテーテル検査にも対応します。
心筋梗塞
狭心症が進行すると、冠動脈の血流が完全に途絶えた状態になる「心筋梗塞」になります。
原因は冠動脈の動脈硬化で、加齢のほか喫煙、高血圧、糖尿病、脂質異常症などによって進行します。
今までは60歳代以上の罹患率が高かったのですが、食生活等の変化によって年齢が下がり、40歳代から狭心症や心筋梗塞になる方が増えてきました。
冠動脈インターベンション(血管内治療)
治療法は、動脈硬化でつまったり細くなったりしている血管を広げるために、冠動脈インターベンション(血管内治療)を行います。
バルーン(風船)を付けたカテーテルを挿入して血管を膨らませて広げたり、ステントという網目状の筒のような形をした金属を留置したりすることで一度広げた血管が再び狭くならないようにします。
心筋梗塞は1分1秒を争う病気ですので、当院では24時間、救急で来られた場合でも対応し治療する体制を整えています。
心臓の病気は早期発見・早期治療が大切です。
ためらわずにご相談いただけたらと思います。